やっさしいがな!野田明宏

 野田さんは岡山市在住、48才のフリーライター。昨年「背番号13の青春録(吉備人出版)」というタイトルの本を出した。
 内容は30年程前、野田さん自身の中3卒業間近の初恋から高3夏の甲子園入場行進までを厳しい上下関係・人間関係それに対する反発、挫折しそうな自身・屈折した心などを描いている。が暗くない、妙に明るい。
 そうさせているのが“やっさしいがな”という見出しのことば。
 色々な場面で何度も出てくるが本人に聞くと地域・少人数(3人)限定、使い方も曖昧な岡山弁らしい。でも読んで見ると「最高」「とてもうれしい」「ものすごく情けない」みたいな箇所で出てくることが多く、私のように運動音痴で部活の経験に乏しいモノには爆笑という救いをもたらしてくれる。高校野球部名門校の厳しい実話だが50才前後の方には懐かしさを、20才くらいの人にはおとぎ話としてお勧め。
 ところで、野田さんの仕事の中心は介護関係の執筆と講演です。この3月より中国新聞に毎週火曜日「アルツハイマーの母のそばで」と題して連載中、またホームページでもお母さんとの日々を日記形式で更新しています(リンクしていますのでご覧下さい)。
 連載記事や日記を見る度にいつも思い出すのが「背番号13の青春録」の終わりの章。甲子園に仕事の都合で行けないお母さんに入場行進しながら野田さんが呼びかけます。
「オフクロー、ちゃんと見ちゅうるかあ?」

 30年前、野田さんが呼びかけた言葉に今の「野田さんとお母さん」すべてが集約されているなあーなんて考えていたらちょっと焙煎が強すぎて店の中が真っ白。まあしょうがない、この焦げたグアテマラは野田さんに飲んでもらおう。きっと一口飲み言うだろう、
 “やっさしいがな!!”。