*矢野氏、パンを持ってくる。
 トーストを出そうと少し前から話をしていたらパンを持ってきてくれる。価格、セットなど色々考えてみたがシンプルがやはり一番、そんなことを話していたら、「何か特色を出そう」といいつつ、10秒ほど沈黙の後「コーヒーの焙煎機で焼いてみろよ」という。「何でも試さなきゃ」とオイウチ。色々と理由をつけたが聞き入れられず・・・・・・。
 焙煎機の中でパンが回っている。矢野氏はタバコをふかし余裕の表情で焼き上がりを待っている。僕はこんなバカなことをしている時間があることに不安を感じている。5分ほどするとパンのいい香り。コーヒーを焙煎するように釜の中を見ながら焼き色を確認。表面が固くなりコトコトと音がする。釜から取り出すのが一苦労だがなかなかの出来。 矢野氏、満足そうに食べながら「いけるじゃない、次は・・・・」
 その時、常連の弁護士Tさんのドアを開く音で日常に戻ることが出来た。
 「また、考えてくるから・・・・・」と矢野氏。
 僕は彼の後姿を見ながら考えた、「早くメニューに載せてしまわなければ・・・・・・」。