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蜂谷秀人「銀輪の国から10」
川本さんは以前にも記したとおり、土産は要らないと念を押していた。にも関わらず、有
償のライターを買ってしまった! 500円くらいのプラスチック製だが、強調したい
のは購入した場所だ。標高3842メートル、名峰モンブラン(4810メートル)を
まともに見上げる展望台の土産店で買ったのだ。エギュイ・デュ・ミディと呼ばれるモ
ンブランの八号目くらいにある展望台に初めて行ってみた。麓町シャモニーから六千円
ほど支払ってロープウェイに二度乗り継ぎ展望台に向かう。一秒に10メートルの速さ
で進む高速ロープウェイは数箇所ある支柱で大きく揺れ、そのたびに悲鳴があがる。所
用時間は二つ合わせて18分くらい、ゴンドラを降りると氷点下の銀世界である。長袖
のジャンパーを着ていたが、手がかじかんで動かない。空気がきれいなので吐く息が白
くならないのが不思議だった。だが、ここは間違いなく富士山より高い場所に居ること
を体やカメラに染み込む寒さが教えてくれた。デジカメとフィルムカメラ二台持ってい
ったが、寒さでフィルムが切れてしまった。意外にも活躍したのはコンパクトデジカメ
や携帯電話だった。こんな場所でも携帯電話の通話環境はアンテナ三本。妻に電話をか
けたらビックリしていた。アルプス越えに何度も来ているが、モンブランをハッキリ見た
事はなかった。それだけに今回の、にわか山岳写真家は何とも嬉しいかぎり。天気に恵ま
れたのと、ツールが21日は休みだったのがこの幸運をもたらした。そういえばシャモニ
ーの直前、サービスエリアの向かいに日本の筆記具メーカー「パイロット」の工場があっ
た。モンブランの前にパイロット、偶然にしては出来すぎている。アビヤント!
やっさし〜な〜蜂谷さんは。
もしかして万年筆も・・・・・。