蜂谷秀人「銀輪の国から14」

 パリは日本食が何でもある。寿司の宅配スクーターが走り回る都会なのだ。パリに着い
 て初めて外食は「きんたろう」という老舗のラーメン屋になった。日本人が給仕、フラ
 ンス人が調理担当という感じで、何を食べても中の下くらいの味だ。それでも味噌ラー
 メンは中の上で、岡山で食べる味噌ラーメンはヘタすれば、ここ以下の店もザラだろう。
 「ドゥーミソ、アンギョーザ!(味噌二つ、餃子一つ!)」など日仏ごちゃまぜの注文
 が飛び交うなか、やっぱり定番の味噌ラーメンをたのんだ。待つこと10分程でラーメン
 が来た。具はモヤシ、ネギと海苔、そしてよくここまで薄く切ったなと感心するチャーシ
 ュー2枚である。
 ラーメン鉢も縁に竜紋がついた一般的なもので、強いて言えばネギが少し日本のモノよ
 り香りが少ないくらいで、目の前30センチは完璧な日本の世界。麺を食べ、スープをすす
 り顔を上げると両脇はフランスのビジネスマン、ガラスの向こうはパリの風景が広がる。
 ここが凄いと思うのは、日本食恋しさに来店する日本人より、新しい日本食として舌鼓を
 打つフランス人のほうが多いことだ。値段は8ユーロ。今の日本円を掛ければ法外な値
 段だが、仮に1ユーロ百円くらいの感覚の現地人にしてもラーメン一杯が8ユーロは高い
 ほうだと思う。探せば5ユーロの食べ物もいっぱいあるのだから。しかし、いつ来ても
 フランス人が多い。ラーメンスープをズズッとすすりたいが、両脇の紳士のために静か
 に蓮華を口元に運んだ。アビヤント!


 ラーメン1杯8ユーロ、日本円に換算すれば1300円か?。税金が20%くらいだろ
 うから実質は・・・・。
 珈琲がいくらか帰ってきたら聞いてみよう。
 
 写真展の最終日、一人ポツンとかわいい女性が来店。聞いてみると高校の写真部に
 所属しているとのこと。ちょうどカメ博士で写真家のO上さんがおられたのでご紹介。
 グロスに女子高生が来るのは10年ぶりはオーバーにしても遠からず。
 とても礼儀正しい女子高生で心地良い1日。ありがとう。
 

 本日、矢野氏のエッセイを更新しました。タイトルは「明日に向かって生きようよ」
 楽しんでください。


ここまで書いたのが5時頃。今、8時過ぎ。写真展の最終日でもあり、写真仲間がワイワイガヤガヤしている。
メールを見ると蜂谷さんからNO15の「銀輪の国から」が届いていた。
明日グロスは休日、大サービスでNO15を贈ります。

  
  蜂谷秀人「銀輪の国から15」

  30年以上フランスで日本語新聞「オヴニー」を発行続けているEDITION ILYFUNET。そこ
  の創設者の小沢君江さんに会った。早稲田の学生時代に留学中のベルナール・ベローさ
  んに会い結婚、夫と二人三脚で新聞を作り続けて来た。ベローさんは一線を退き、息子
  さんが後を継いでいるが、小沢さんは主筆として今も忙しくされている。超日本人的な
  ご主人と違って小沢さんはフランス人の考え方が自然な形で垣間見える。そんな小沢さ
  んと政治の話をした。フランス大統領は右派だが市民生活直結の地方議会は社会党が優
  勢だそうである。パリは20区あるが、そのうち12区が社会党の区長だそうだ。これはフ
  ランス全体にも当てはまり、六割が左派の議院になっていおり、サルコジ大統領の人気は
  支持率38%と就任一年目としては超低空飛行になっている。そんななか、小沢さんがフ
  ランス人ぽいなと思った瞬間がある。カーラ大統領婦人が自分のCD録音を優先させ、サ
  ミットを欠席したのは理解出来るというのだ。日本人の感覚で言えば録音を延期してで
  も公務優先、つまり滅私奉公を常とする。しかし小沢さんの意見は「大統領婦人といえ
  ど、その期間は最大15年、下手をすればこの5年間で終わるかも知れない。だがミュージ
  シャンとしての人生は一生だ。だからアーティストの仕事を優先させたのは正しい」と
  言う。芸術家の地位が高いフランス。こんな考え方もあるんだと感心した。最後にサル
  コジ大統領の良いところを教えてもらった。過去の大統領はお忍びで愛人宅に通ってい
  たそうで、週刊誌のスクープ材料だった。スッパ抜かれる前に堂々と離婚発表し、三度目
  ?の結婚をしたサルコジ大統領は正直で評価出来るらしい。アビヤント!



蜂谷さんは日曜日に帰ってくると言ってたっけ。僕の勘違いかも知れない。少なくてももう2回
はあると思います。ご期待下さい。
おやすみなさい。