蜂谷秀人の「銀輪の国から #3」

ブルゴーニュ地方のホテルから一路、フランシュコンテ地方を目指す。2009年初のツールとの再会である。
高速36号を東に進むと同地方中心都市ブザンソンが現れる。ここは指揮者コンクールが有名で小沢征爾が優勝して一躍名を馳せた。そのブザンソンの東20キロ地点にツールが通る小村があるので、そこを目指した。
CLERVALという村は人だかりで一杯。村きっての一大イベントなので役場も郵便局も平日なのに、ちゃっかり閉まっている。
小村でツールを撮るのは稀なことである。何故なら車を置く場所が限られているのと、道が狭くて運転する気が失せるからだ。今回は非常に簡単に、しかも教会の真ん前にカメラを構えることが出来た。
律儀に15分置きに鐘が鳴り、時間経過も腕時計無しで分かる。25ミリの広角レンズで教会の尖塔を入れて第一集団を撮 ることが出来た。8分後に大集団が通過、教会前は下り坂なので凄いスピードで疾走する。そんな中でもマイヨージョー ヌがハッキリ見てとれた。気が付いたらコンタックスキヤノンEOSがけたたましい音を立ててフィルムを巻き戻していた。
デジタルが当たり前の今、フィルム巻き戻しのモーター音が妙にすがすがしい!一仕事終えたチャイムのように聞こる。本日の撮影本数はモノクロ、カラー含めてたったの3本。どんな絵が撮れたかは現像するまで分からない。
帰国までに撮影済み画像はどんどん美化され、傑作と変化していく。そして現像後、まるで宝くじが外れたかのような虚脱感に襲われる。この繰り返しを20年続けてきた。
 今日の絵は良かっただけに、宝くじでいうところの3000円くらいは当たって欲しいと思った。アビヤント!」