蜂谷秀人の「銀輪の国から #4」

 「今日は移動日。ブルゴーニュ地方からアルプス地方まで走った。走行距離は450キロ。途中、毎回立ち寄るヴォーヌロマネ村へ行った。一本が50万円以上するロマネコンティを産出する村である。
 今年は丘の上に上がって眺めることにした。ロマネコンティの畑は十字架が目印なので遠目にもすぐ分かる。丘から写真を撮っているとフランス人親子にロマネコンティの場所を聞かれた。十字架の仏語が浮かばないと思った瞬間、有り難いことに観光客の車が停まっていた。「あの車の所です」と言うと彼等は喜んで丘を下って行った。
 畑の前まで降りてみると、入れ代わり立ち代わり観光客が車や徒歩でやって来る。畑の脇には間引きしたブドウの葉が捨ててある。見た目にはしょぼい葉っぱでも、ロマネコンティを産みだす品種、ピノノワールの葉である。これはワイン好きには最高の土産だ。周辺の石と共に記念に持ち帰ったのは言うまでもない。
 グロスには過去、ロマネコンティの石は進呈したような気がしたが(してなかったらスミマセン)、葉っぱは初めてになる。ホテルに着いたら農薬で白くなった葉を綺麗に洗った。
 ただ、これだけ気持の行き届いた仏土産も、川本さんは一瞥(いちべつ)しただけでカウンター内のパソコン作業に戻るだろう。ロマネコンティにまつわる土産話も持って30分だろう。
 何故こんなことになるのか? それは互いに「ロマネコンティを味わった事が無い!」の一言につきる。味わうどころか瓶すら持った事が無い。ただ小生が川本さんより優位なのは空瓶を目撃したことくらいである。もし葉っぱと共にロマネコンティを数滴でも進呈出来れば、彼岸までは小生の土産話を真摯に耳を傾けてくれることだろう。
 こんな現実味の無いワインの液体贈呈計画より高知土産の鰹節の方が安価で喜ばれそうだ。アビヤント!」



葉っぱはありがたいですね、栞に使いたいと思います。
石ですが確かに頂きました。珈琲の豆に混ざって届いた石とミケランジェロが彫ったであろうフィレンツェの石と一緒に大切にしております。
感動とか歓喜にたいする表現が下手なだけですよ、蜂谷さん。