蜂谷秀人の「銀輪の国から #5」

「小生は今、アルプスの小都市シャンベリーに滞在している。アルプス山脈のイタリア、スイスに面する地方はサヴォア地方と呼ばれる。13世紀から16世紀まではサヴォア公国だっただけに、街の至る所にサヴォアの旗が立っている。
 赤地に白十字 のデザインデンマークの旗にそっくり。ただデンマークは十字の交差点が少しずれているのに対し、サヴォアはど真ん中に交差点がきている。ともあれ地方旗が誇らしく青空にはためく姿は、岡山県知事や市長はさぞ羨ましいに違いない。
 小生などは市役所のすぐ側に住んでいるにも関わらず、市役所屋上の市旗が思い出せない。フランスが凄いのはサヴォアに限らず、どこの地方へ行っても地方旗がはためき、料理や衣装など民族色が強いことだ。独自色が強くなりすぎると独立運動となりテロの脅威が増えるが、フランスのそれは良いバランスを保っている。丁度、日本で言えば沖縄のような文化の濃さがフランスのどの地方にも息づいている。
 日本でも地方の時代が叫ばれているが、役所の屋上のみにはためく地方旗を見る度に、フランスの地方色と浸透度の差を痛い程感じてしまう。アビヤント!」