蜂谷秀人の「銀輪の国から #8」

リヨン方面からアルプス地方の都市、シャンベリーを目指す。いよいよシャンベリーの料金所というところで異変を感じた。税関と書かれたシャツを着た屈強な警察官がうじゃうじゃいる。
 異邦人とすぐ分かる小生は駐車場に誘導された。車中を徹底的に三人で調べる。勿論怪しいモノは無いのだが、やはり緊張する。風邪薬を見付けられた時はヒヤーっとした。イタリアでは粉薬は麻薬と間違えられると聞いたので、フランスでもマズイことになったら…。
しかし何の問題もなく通過出来た。それもこれもツールドフランスのお陰と言っても良い。まず日本人がツールを撮りに来ていることが心証を良くした。後は「ニコンキヤノンはどっちが良い?」とか「カメラはデジタル?」など全く税関に関係ないことを聞かれた。
 三人の内、二人は髭を生やした恐持てだが、妙な熱心さが面白かった。日本人が二人出ていることも知っており、それを小生の買った仏スポーツ紙で確認したがる。何紙も手にとり、ページをくってみて「アラシロ…、ベップ!」の文字を見付けた時には大喜び。これでフランス警官のにわか日本人選手ファンが三人増えたことになる。ツールは警察官の尋問も弛緩させる魔力があるのだ。アビヤント!


昨日予定の夏祭りも雨で今日に順延、でも今日も生憎の雨。夏祭りは・・・・
外の出ることも出来ない皆様のために#9を・・・


蜂谷秀人の「銀輪の国から #9」

 ツールドフランスの撮影を始めて早20年。待ち時間の間、何人ものフランス人を見てきた。ただ漠然と人間観察をしてきただけだが、幾つかの共通点があるのに気付いた。
 その1 ヘリコプターがやって来ると必ず手を振る。これはかなり正しい仮説で、相手が放送用、警察用関係なく老若男女が嬉しそうに手を振る。
 その2 フランスは日本と違い、夏でも寒いくらいの気温地域がある。それなのに必ず「健康優良児」のような半袖短パンのオヤジがいる。それもTシャツが色褪せ、縮んでいる。メタボのおじさんなどTシャツ下部から腹が出ている。見てるだけで寒そうなのに本人は心からツールを楽しんでいる。
 その3 沿道には数多くの観戦客がいる。その中に70%の確率で応援を煽るオヤジが出る。ファジアーノ応援団ほど見事ではないが、応援団長を標榜するおじさんが現れウエーブなどを周辺に強要したがる。23日の個人タイムトライアルでは酔っ払ったオヤジが、とにかく周辺を自分の応援スタイルに持ち込もうとした。しかしあまりにも独りだけ浮き過ぎて賛同者は家族のみの寂しい結果だった。それに比べて2001年のアルプス越えに現れたオヤジは扇動が上手く数十人が参加して盛り上がった。
 思い付いたフランス人気質を列挙してみたが、これはあくまでもツール中の話である。パリ上空をヘリコプターが飛んでも誰も手を振らないので悪しからず。アビヤント!