蜂谷秀人のツール・ド・フランス レポート「銀輪の国から10」

16日は移動日。雪山の見えるグルノーブルから一気に南仏ミディピレネー地方へ500キロ走った。高速道路沿いの森を通過する度に、セミの鳴き声がする。いくら暑くてもアルプス地方では聞こえなかった音だ。盛夏真っ只中に自分が浸っていることを実感する。
ホテルに着いたのは午後4時頃。テレビではツールドフランスのゴール直前の様子を伝えていた。解説者はツールドフランス二度優勝したローラン•フィニョン。しゃがれ声が気になる。と云うのも彼は現役時代のドーピングを告白、そのせいで現在癌治療中である。昨年までは、張りのある声だったが、今年はヒソヒソ話のような解説だ。それでも、バカロレア(仏大学入学資格)合格者だけあって、ユーモアを交えながらアナウンサーと良い関係を保っている。
とにかく、最初は聞いていて痛々しかったフィニョンが、理論派として活躍しているのが嬉しかったし、ドーピングの恐ろしさを静かに訴えているのが素晴らしい。
ツールドフランスを見た後、ホテルのレストランで夕食後、珍しくコーヒーを注文した。今日の長旅が終り、ほっとした。アビヤント!